【2022年9月最新】社員研修に活用できる助成金・補助金を解説
企業にとって人材育成は大きな課題です。
なぜなら、社員教育を通じて安定したキャリアを形成し、能力向上を図っていくことは、企業の長期的な成長のために必須だからです。
能力育成を社員の自己責任に委ねていると、社員間で能力の格差が生じてしまいます。社員個々に一定の能力を担保することは、会社として必須の業務といっても過言ではありません。
また、同じ社内にいても、正社員とパート・アルバイト間であまりにも技能に差があるのは好ましくないでしょう。そうだとすれば、社員研修を実施して一定の教育を施し、できれば非正規雇用者まで能力開発を行うべきでしょう。
そこで、この記事では人材育成に活用できる補助金・助成金について取り上げ、ポイントを解説します。
この記事を読めば概要が理解できるはずです。
1.企業における人材育成の重要性
企業の根幹をなすのは人です。
会社によっては、「人材」を「人財」と表現することもあります。人材育成はあらゆる企業にとって喫緊の課題なのです。特に重要なのは社員への教育機会の付与です。
しかし、研修を実施しようと思っても費用がかかります。
例えば、100人の中堅社員に向けて3日間の管理職研修を実施したところ、費用が300万円もかかった事例もあります。
このため、会社の中には資金面で難があり、研修をあきらめているケースもあるのではないでしょうか。
しかし、お金の問題からあきらめてしまうのはあまりにももったいないです。
なぜなら、公的な補助金・助成金を活用すれば、資金面の課題を克服できるからです。
研修にかかる費用を、一部負担してくれるものもあり、企業にとって大きなメリットを持ちます。
2.企業が人材育成の為に使える補助金・助成金とは
補助金・助成金には、厚生労働省が行っている全国の企業が対象になるものと、地方自治体が既定する地域でのみ利用できるものがあります。
2-1.【厚生労働省主催のもの】
制度の目的は以下の通りとなります。
- 雇用の安定
- 職場環境の改善
- 従業員の能力向上
- 仕事や家庭の両立
では、具体的にどのような補助金・助成金があるのか以下で紹介します。
①人材開発支援助成金(旧:キャリア形成促進助成金)※2022年9月1日より制度の見直し
事業主が労働者に対して、技術習得を目的に訓練を実施したときに支払われる助成金です。
全額が補填されるのではなく、訓練経費や、その期間中にかかった賃金の一部を助成してくれます。
②教育訓練給付制度
働いている人たちが、主体的な能力開発やキャリア形成ができるように支援し、雇用の安定・就職の促進を目的に行われているものです。
厚生労働省が指定した訓練を終了すると、かかった費用の一部を支給され、受け取ることのできる制度になります。
③人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)
雇用管理制度を導入や実施するときに、従業員の離職率を高めないために、事業主に支払われる制度です。
主に、諸手当や研修、健康づくり制度、メンターや時短正社員制度などが対象です
2-2.【東京都主催のもの】
東京都が独自で行っている補助金・助成金になります。
①社内型スキルアップ助成金・民間派遣型スキルアップ助成金
都内にある中小企業もしくは、中小企業が所属している団体が職業訓練を行った場合に、支払われる助成金になります。
(短時間の場合)個人事業主も申請のできる制度です。
②令和4年度オンラインスキルアップ助成金
都内にある中小企業が、従業員に対してeラーニングを利用した職業訓練などに係る費用を助成してくれる制度になります。仕事に必要な知識や技術の習得や向上、資格の取得などが目的です。
③令和4年度DXリスキリング助成金
都内にある中小企業が、民間企業の提供しているDX(デジタルトランスフォーメーション)に関しての訓練に、従業員を派遣するもしくは、eラーニングを使った費用を助成するものです。
3.人材開発支援助成金(旧:キャリア形成促進助成金)
2022年9月1日より制度の見直しにより、対象となる訓練施設の条件を申請している事業者と関係性がある人の施設でも対象になるように変更になりました。
また、通信訓練に参加したときに使用する「受講者の出席状況が分かるログ、訓練受講時の受講者を撮影したスクリーンショット等」などの省略なども変更点です。他にも「定額制訓練の要件の変更」「OJT訓練指導者」「短時間勤務制度」などの要件に変更が出ています。
令和4年に実施されているコースは以下の通りです。
①特定訓練コース
正規雇用者を対象とし、生産向上を目的とした訓練が対象です。
OJT付きの若年層を対象にした訓練や、労働生産性を高める訓練など効果が高いと認めた10時間以上のものにその経費や賃金の一部を助成するものです。上限額は1000万円です。
※2022年よりグローバル人材育成訓練は「廃止」になりました。
※若年人材育成訓練は雇用保険の被保険者になった日から5年を経過していない人
②一般訓練コース
正規雇用者を対象とした訓練。
仕事に対して専門的な知識や技術を習得させるため、20時間以上の訓練を実施した場合に、経費や賃金の一部を助成するものです。
※特定訓練と一般訓練は業種を問わずに使える制度なので、最も活用されています。特定訓練は、生産性の要件を満たしている場合、60%にもなる経費の助成率が期待できます。(一般は同条件で45%の助成率)上限額は500万円です。
③教育訓練休暇等付与コース
有給教育訓練などを実施。休暇を取得して訓練を受けた場合に支給されるもの。
120日間以上の長期教育訓練休暇制度も導入されます。
基本となる助成金は30万円まで(生産要件を満たす場合は36万円)となり、長期の場合は定額20万円、1日6000円(生産要件を満たす場合24万円、1日7200円)です。
④特別育成訓練コース
有期契約労働者の人材育成を行った場合に助成されます。
OJTを実施した場合1訓練で10万円(大手は9万円)となり、1日に指導できるのが3名までのルールがあります。
中長期のキャリアや、中小企業担い手育成訓練などで違いがあります。上限額は1000万円です。
⑤特別育成訓練コース
非正規雇用者を対象とした訓練。
- 人への投資促進コース
2022年4月1日から新設されたコースです。雇用保険の被保険者を対象にしたもの。
定額制のサービスでの訓練を促進するものになります。デジタル分野の社員教育を目的としており、国民のアイディアによって生まれた制度です。非正規雇用でIT未経験者でも受講できます。
具体的には「高度なデジタル人材を育てたい」「オンラインの定額受け放題サービスを使いたい」「労働者の自発的な学び直しの費用を作りたい」「労働者の自発的な学び直しで休暇制度を取り入れたい」などの希望を叶える制度です。
下記も対象となりますので、注記として付け加えます。
- 建設労働者認定訓練コース
- 建設労働者技能実習コース
- 障害者職業能力開発コース
なども対象になります。
4.教育訓練給付制度
受講する人のレベルに合わせて、教育訓練は種類が分類されています。
①専門実践教育訓練
中長期的なキャリア形成の教育訓練が対象。
受講費用の50%(年間上限40万円)を、訓練の受講者に6か月ごとに支給されるようになります。資格取得後、1年以内に雇用保険の被保険者になった場合は、受講費用20%(年間上限16万円)も支給される仕組みです。
②特定一般教育訓練
労働者の速やかな再就職や早期のキャリア形成などの教育訓練を対象にしているものです。受講費用の40%(上限20万円)が、訓練が終わったあとに支給される仕組みになります。
③一般教育訓練
雇用の安定や就職の促進などで行われる教育訓練です。受講費用の20%(上限10万円)が、訓練が終わったあとに支給される仕組みになります。
5.人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)
- 雇用管理制度助成コース
実際に雇用管理制度を導入したうえで、研修制度や諸手当制度として利用できます。
離職率の目標を達成した場合に、57万円助成される仕組みです。
また、申請したときに3年前と比較して生産性の向上が見られたときは15万円が追加として助成される仕組みになります。
他にもこれだけの種類があります。
- 介護福祉機器助成コース
- 中小企業団体助成コース
- 人事評価改善等助成コース
- 建設キャリアアップシステム等普及促進コース
- 若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)
- 作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)
- 外国人労働者就労環境整備助成コース
- テレワークコース
6.社内型スキルアップ助成金・民間派遣型スキルアップ助成金
資本金の額もしくは従業員の数(常時)のいずれかに該当するもの
産業分類 | 資本金の額 | 常時使用する従業員数 |
---|---|---|
小売業・飲食店 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
上記以外の産業 | 3億円以下 | 300人以下 |
申請条件として、都内に本社や事務所の登記があり、訓練に関する経費を受講者に負担させていないなどの条件があります。
また勤務時間内に行ったうえで通常の賃金の支払いも必要です。国や地方公共団体からの助成を受けるなどの併用は禁止です。
①社内型スキルアップ助成金
中小企業や団体が対象になり、3時間以上12時間未満の訓練を必要とします。
場所は都内であり、2名以上の修了者がいるのが条件です。集合型で同時や双方向のオンライン訓練などが対象です。
②民間派遣型スキルアップ助成金
中小企業が対象になり、3時間以上20時間未満の訓練を必要とします。場所は都内であり、1名以上の修了者がいるのが条件です。集合型のみ訓練の対象になります。
常勤で勤めており、訓練に8割以上出席する必要があります。年間合わせて100万円が上限です。
7.令和4年度オンラインスキルアップ助成金
都内に本社もしくは事務所の登記があり、訓練に要する経費を従業員に負担させていない、国や公共団体から助成を受けていないことが条件となります。
上限額は27万円になり、小規模企業者は2/3程度、そのほかの中小企業は1/2程度の補助率です。対象となる経費は、受験料や受講料となります。
8.令和4年度DXリスキリング助成金
中小企業もしくは個人事業主になり、都内に本社もしくは事業者の登記があること、経費の負担を従業員にさせていないなどの条件があります。
また国や地方公共団体から助成を受けていると、受けられなくなってしまいます。申請は1事業者1回のみになり、助成対象経費3/2、上限額64万円です。
対象となる経費は教育機関などが価格を公表しており、1講座の対象期間や受講料が定められているもの、教科書代や教材費、eラーニング実施に係るID 登録料、管理料などです。
9.まとめ
この記事では厚生労働省や東京都が行っている補助金・助成金について紹介しました。
制度を利用するためには各々の要件がありますので、十分に確認して自社に合った補助金・助成金を活用してください。公的な制度を上手に活用しながら、人材育成に努めることが企業の長期的な成長に欠かせません。この記事が人材育成の一助となれば幸いです。
次回は首都圏以外の補助金・助成金という内容を取り上げます。
首都圏以外にフォーカスしていきますので、第2弾もご期待ください